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今年の冬は韓国から日本へ二度帰ることになった。二度目の帰省のときに、仁川空港でパク・ミンギュの『カステラ(카스테라)』という短編集を買った。一本目の短編「カステラ」の始まりはこんな感じである。
この冷蔵庫の前世はフーリガンだったのだと思う。 個人的にこういう訳の変わらない小説が好きなので、買って移動時間の暇つぶしにすることにした。 各短編の主人公は学生や若い会社員などである。物語の中では大抵、奇想天外でリアリティとは到底かけ離れた物事が起こり、ときにそれがユーモラスで笑いを誘う。しかし、それらの装置は結局何か別のものを表現するための手段なのであって、それ自体にたいした意味はないように思える。そして表現される何かというのは、大抵の文学がそうであるように、人間そのもの、韓国社会そのものである。文体は話し言葉の(口語の、というのとは違う気がする)要素をふんだんに取り入れた独特のものだが、にも関らず幼稚さを感じさせないのは、もともとの文章力故というべきだろうか。文体だけに留まらず、世界観も独特なので、あまり色々読んでいると食傷気味になりそうだったが、短編集1冊というのは自分にとって食傷気味にならずにすむちょうどいい分量だった。 あまり書くとネタバレになるので、各短編に関して何となくこういうことを言いたかったのかな、というのをメモ。正直、最後までテーマがわからずじまいのものもいくつかあった。 「カステラ」? 「ありがとう。やっぱりタヌキだ」苛酷で無味乾燥な現実世界と魅力的な楽しみの世界。楽しみの世界を選んだ人間は現実世界から淘汰されてしまう。しかし人間は、楽しみの世界から力を得なければ、現実世界を生き抜いていくことはできない。 「そうですか?キリンです」? 「もう知らない、マンボウだなんて」冒険の目的は、未知のものを得るためであり、既知のものを再確認するためではない。 「アーしてくださいペリカン」最悪の状況でも、逃げ道さえ確保できていれば、人は強くなれる。 「ヤクルトおばさん」? 「コリアン・スタンダーズ」出る杭は打たれる。 「大王イカの奇襲」怪獣を望む子供の心理。 「ヘッドロック」? 「甲乙考試院滞在記」どんなに汚くて狭くても、最後の安息所は必要である。 最も共感できたのは、「タヌキ」「マンボウ」「大王イカ」あたり。夢を忘れてはいけない、的なことがストレートではなく、きわめてシニカルに、でも中身としてはかなり直球気味に描かれているところが良かった。
by guixiang
| 2010-02-17 18:48
| 読書
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